外伝 ミコト・ウタヨミ編
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![]() | こんにちわっ、皆さん。和歌の神をしています。ミコト・ウタヨミです。 | |
![]() | 今日は特別に、私たち神様が普段何をしているのかを教えてあげますねっ。 | |
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![]() | ジャンッ! ここは下界にある和ノ国、私の社があるところです。 | |
![]() | 上界に住む私たちは、自分の社を通して、人々の暮らしを見守ります。 | |
![]() | で、人は自分の目的にあわせて縁のある神様の社へお参りや願掛けをします。 | |
![]() | なんせ八百万ですから! 色んな神様が日々人の願いを叶えたり叶えなかったりしてるわけ。 | |
![]() | それで。神様には人から感謝されると「ご利益ぽいんと」が貯まるんですけど……。 | |
と、ミコトは大きくため息をついて俯いた。 | ||
![]() | 私、20ぽいんと……。誤字ばっかで役に立たないから……。ありがたくないから……はっ! | |
![]() | すみません。取り乱しました……。それでは気を取り直して、私の社をご案内しましょう! | |
ミコトに連れられてやってきたのは、町外れのうらびれた小路の奥だった。 | ||
![]() | ジャンッ! 私の社はこの先になります。 | |
立ち止まったミコトの後ろには、うっかり通り過ぎてしまいそうな、小さな脇道が続いている。 | ||
とてもこの先に社があるとは思えない。 | ||
![]() | むむ! なんか不安そうな顔! ありますよ! 立派……ではないけど、可愛い社がちゃんと! | |
そしてミコトは脇道へ入っていく。 | ||
ミコトの社は、こじんまりとしているが、確かに風情があって可愛いものだった。 | ||
![]() | 言ったでしょ? それに私は小さい社で十分なんだ。和歌関係のお願いって少ないですから。 | |
![]() | 商売繁盛とか必中祈願とかみたいに、沢山の人がくる社はもっともっと大っきんですけどね。 | |
![]() | 私の社はご覧のとおり、誰ひとーり……ん? あれはもしかして久しぶりの参拝者では……? | |
と、ミコトは社の木陰に目を留める。 | ||
そこには、ひとりの女剣士が、刀の束を枕に昼寝をしている。 | ||
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……むにゃむにゃ。いくじぇ……双獅子剣舞……ちくしょう……また失敗だぜ……むにゃ。 | ![]() | |
![]() | うーん。ぐっすり眠ってますねぇ……。剣士かなぁ……。 | |
ミコトはその寝顔を覗きこむ。神は下界の人には見えないらしい。 | ||
……むにゃむにゃ……ぜったい体得してやるぜ。むにゃ……。 | ![]() | |
と、寝返りをうった女剣士の胸元から一冊の巻物が落ちる。 | ||
![]() | ん? なになに……? | |
と、ミコトは落ちた拍子に開いた巻物を読み始める。 | ||
![]() | ふむふむ……。剣術の指南書のようですね。奥義双獅子剣舞……うんうん……なるほど! | |
と、ミコトは振り返り、 | ||
![]() | この人、きっとこの技を練習中なんですね! | |
![]() | ここで昼寝してるのも何かの縁! お願いされてないけど、私が一肌ぬいじゃおう! | |
とミコトは腕をまくって懐から短冊と筆を出し、歌を詠みはじめる。 | ||
![]() | 和歌の社で眠る剣、神に出会いて光だす、双獅子剣舞、そして覚えん……っと。 | |
![]() | じゃーん! こうやって私が歌をかけば、あの剣士女子はたちまちこの技を覚えちゃうんです! | |
と、ミコトは力いっぱい短冊を見せつける。 | ||
──しかし、書かれた技の名前には「剣」の字が抜けている! | ||
![]() | うわっ! ……また誤字ったか。これじゃ「双獅子剣舞」じゃなくて、「双獅子舞」じゃん……。 | |
そして彼女の前に──。 | ||
![]() | きゃ! し、獅子舞でた! 2匹も出てきた! | |
![]() | キャッ! | |
鋭い剣閃の後、ミコトを襲う2匹の獅子舞がバタリと倒れる。 | ||
ふぁぁーはよく寝たぜ……って、ん? | ![]() | |
女剣士は、自分の握っている白刃とその場に倒れている獅子舞を見比べる。 | ||
起き掛けに払った一閃で2匹の獅子舞を……? ……はっ! 見えたぜ! 奥義双獅子剣舞! | ![]() | |
よっしゃ! 勝負だツバキ! | ![]() | |
言うが早いか、彼女は剣を収めて走りだす……。 | ||
![]() | あーびっくりした。それにしてもあの剣士女子、すっごい強い! | |
と、ミコトが彼女の背中を眺めていると──。 | ||
![]() | あ、忘れ物かな? 戻ってくるよ。 | |
と、女剣士はミコトの前──社に置かれた賽銭箱の前で立ち止まる。 | ||
……ここで昼寝したおかげかも知れねぇからな。一応なっ。 | ![]() | |
![]() | ……これはもしやの天界……間違えた、展開なのでは?! | |
そして女剣士は懐から銅銭を一枚……。 | ||
![]() | お、おおおお!? | |
チャリン! | ||
ありがとさん! じゃあな! | ![]() | |
![]() | やったー!! 私21ご利益ぽいんとになりました! やった、やった、やったー! | |
と、ミコトはよくわからない動きで踊り始める。 | ||
![]() | はっ! 神なのに取り乱してしまった……! | |
![]() | ……ということで、神様はこのように日々、人の願いを叶えたりしているのです! | |
![]() | 皆さんも何かお悩み事がありましたら、是非私の社まで来て下さいね! | |
![]() | それではまた! | |
![]() | だ、誰と話してたんだ? ミコトのヤツ……? | |
さ、さぁ……。 | ![]() |
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